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This Archive : 2012年04月

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2012.04.23 *Mon

●○ ・・・微かな ○●



4月の誕生石…ダイヤモンド
・石の語源…ギリシャ語の adamas 、「不屈なもの、征服できない、懐かない」
・登場人物・・・あやね、健人





+ ・・・微かな

**********************


・・・何度扉をノックしても、返事がないんだ。
こんなこと、正直初めてなんだよなぁ。
あまりにわからなすぎて、オレとしたことが風早坊ちゃんにまで相談らしきものをしてしまった。
まぁ、唐突過ぎると言えば唐突すぎるしな。
・・・オレ、いまちょっとふわふわしてんのなぁ。
なんか、笑える。でも、そんな自分が別に嫌じゃないことにも、驚いたな。



---



「あやねちゃん!」

HRが終わってからしばらく経つ。屋上で物思いに耽り、薄闇があたりを覆い始めたころ
ケントは自らも帰途につこうとぼんやりした足取りで下駄箱に向かった。
そこで、図書室帰りのあやねと遭遇する。

「・・・あー、ケントか。何、遅いじゃない」

あやねは手に持っていたローファーをコンクリの床に下ろしたところだった。
屈みながら上目遣いで健人を見る。

「今、帰り?」

「うん、そう。あやねちゃんはまた勉強してたの?」

図書室で?という顔をしている健人に、あやねは口元にうっすら笑みを浮かべて応える。

「・・・そうよ。落ち着くの、あそこ」

「ふーん。ね、一緒に帰っていい?」

同じく下駄箱からスニーカーを出し履こうとしている健人を残し、あやねは校舎を出る。

「嫌だけど、嫌だって言ったら超やなやつよね、あたし。会っちゃったんだし」

ふぅ、とため息が聞こえる。しかしそんなことにめげる健人ではない。

「ラッキ」

健人は先に出たあやねを追って、校舎を出る。あやねの半歩後ろについて、歩いた。





(・・・気付いて、くれたかな。気付いてないかな)

ふわふわ、ふわふわ。

風に揺れるあやねの髪と、健人の想いが重なる。

「・・・日、長くなったねぇ」

相変わらずあやねの後ろを歩きながら、健人がつぶやいた。

「うん、そうだね。・・・あたし、・・・春のさ、こういう時間、すきなんだよね」

車道を通る車が一陣の風を起こす。それにさらわれる髪を、片手で押えながらあやねが言った。

「なんかさ、夕暮れと・・・湿った空気が、混ざるじゃない。この感じ」

陸橋の上で薄い灰色のカーテンを降ろし始めた空を眺め、川面を見つめる。
今日のあやねはいつものあやねとはちょっと違うようだ。
・・・彼女の好きな、夕暮れの時間がそうさせているのだろうか。
いつもよりも伏せ目がちな瞳を見つめて、思う。

「わかるよー。匂い、あるよね。こういう時間って」

季節ごとに違うよなー、と後に続ける。

「・・・あやねちゃん、キレイ」

健人はふと思ったことを口にしてみた。

あやねは髪を抑えたまま振り返り、驚いた顔をしている。
もともと大きな瞳が、はちきれんばかりに開かれている。

「・・・そういうのはさ、ケントガールズに言ってやんなよ」

「え~?何それ?」

「あんたの取り巻きの女子たち・・・いるじゃない、可愛い子がいくらでも」

健人はふと考え込む。よく会話を楽しんだりイベントを楽しんだりするあの子たちのことか、と思い当たる。

「あの子たちはそういうんじゃないからなぁ。・・・あやねちゃんは、キレイだし、・・・可愛いよ」

あやねは何も言わず、黙ってしまった。

(・・・ほんとは、優しい君のほんとの気持ちが知りたいんだけど…)

知ってしまうのも怖い。
今までそんな関係でもなかったから、こんな風に話すのも新鮮だ。
だからこそ、健人の気持ちは簡単には届かない。

「そういう風に、空気とか、季節とか感じられるのって、・・・素敵じゃん」

だから、あやねちゃんは心が奇麗だよ。可愛いんだ。

聞いているのか聞いていないのか、あやねはだんまりを決め込んだまま川面から視線を外さない。
見上げる空には無数の星がきらめき始める。

「・・・なによ、調子狂うわ」

歩きだしたあやねに慌てて、後を追いかける。

「ほんとだよ。・・・俺も、ちょっと変わったっしょ」

いろいろあったからねぇー、といつもの調子でおどける。

「・・・そーいうとこは変わってないけど、ちょっとは変わったかもね」






(・・・気付いてくれるかな。気付いてくれないかな)

交差点で、手を振り別れる。
健人はいままで確かにそこにあったぬくもりが離れていくのを、肌で感じる。
触れたわけではないが、同じ空気を感じて、少しだけ近づけた気がした。
歩き去るあやねを見つめながら、そのことが幻ではないことを祈る。

ふわふわ、ふわふわ。

あやねが振り返り、まだ佇む健人に気付いて大きく手を振った。
健人はびっくりして手を振り返す。あやねが再び歩き始めるのを確認して、背を向け歩き始める。

バックを肩にかけ両手をポケットに入れたまま、健人は空を仰いだ。
あやねの言った通り、少し湿った空気と凛と冷たい夜風が混ざり始める。

「・・・北斗七星。・・・あれ、ほんとは北斗八星なんだっけ」

柄杓型の星座に視線を滑らせる。
健人はあたたかい気持ちを感じながら、ゆっくりと歩いた。



---


ふわふわ、ふわふわ。
澄み切った空気のもとふわりと漂う、微かな恋の香り。








Fin





**********************




春の夜と夏の夜の空気が大好物です。
芦屋トモです、こんばんは。


4月の誕生石は以前一話書いているんですが、今回は視点を変えてみました。
というかここ半年前くらいにちょっと勉強しなおしていたので、思い出したのです。

ダイヤモンドの語源ってギリシャ語と言われています。その他イタリア語ディアマンテやフランス語ディアマンあたりは有名でしょうか。

この語源から遡ってみると、意味は「懐かない」とか・・・。懐かない・・・
健人に懐かないあやね!を妄想してしまいこの話が書けました。


今夜はあいにくの天気ですが、春の暖かさが来る前の夜というのは本当に独特の空気で、私自身も好きです。

皆さんも、ぜひ夜外に出られることがあったら、気にしてみてください。
いろいろあるけど、日本っていいなぁーと思えます(笑)



2012.4.23 
芦屋トモ






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芦屋 トモ

Author:芦屋 トモ



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【君に届け】二次小説を
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たまにイラストも描きます。
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